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チュルリョーニス:リトアニアへの鍵

11月20日(金)、ヒルサイドプラザ(東京・代官山)で、ヴィータウタス・ランズベルギス氏のレクチャー・コンサート「チュルリョーニスの時代」が開催されました。これは日本で翻訳・刊行されたランズベルギス氏の著作『チュルリョーニスの時代』(佐藤泰一訳、ヤングトゥリープレス、2008年12月/原著 “M.K. Čiurlionis. Time and Content” Lituanus, 1992)を紹介するための催しで、東京大学教授・沼野充義氏の司会のもと、ランズベルギス氏のピアノ演奏と沼野氏との対談で進められました。

当日の来場者に配布されたプログラムのなかで、沼野充義氏は次のように述べています。「チュルリョーニスの絵にも、音楽にも、西洋とは一線を画す、不思議な宇宙的なリズムがあるような気がする。これは魂の原初の形を記憶し、宇宙の律動を直接聞けるような感度を保持している民族にして初めて可能なリズムではないだろうか。そして、暗く混沌とした闇から、明るく喜ばしい光の領分へと、激しい勢いで伸びあがろうとする力も、チュルリョーニスの芸術にはみなぎっている。古い根を持ちながら、世界の最先端に飛びだすことができた天才──彼は作曲ではシェーベルクのセリー技法を、絵画ではカンディンスキーの抽象画を先取りしていた」。

チュルリョーニスの研究者であるランズベルギス氏は、レクチャーでこう語りました。「著書の意図は、宇宙とそこに存在する人間のありさまを、ジャンルの垣根を越えて表現したチュルリョーニスの芸術全般を俯瞰することにあります。いわば彼の芸術創作は書き尽くすことのない本のようなものなのです」。

外交官、研究者、記者らを含む当日の聴衆は心ゆくまでチュルリョーニスの音楽を堪能しました。演奏された曲目は「6音列a-d-f-b-es-gesの主題によるプレリュードニ短調」「“Sefaa Esec”の主題によるピアノのための変奏曲」「プレリュードト長調」「連作風景《海》より第2曲」など。

この催しは駐日リトアニア大使館の主催のもと、同大使館の文化担当官、日本リトアニア友好協会の尽力により実現したものです。

著書『チュルリョーニスの時代』の目的は、幅広い読者層にチュルリョーニスの生涯と創作(作曲、絵画、文筆活動)を俯瞰し、できるだけ多くの情報を提供することにあります。

日本語版の特徴としては、まず、翻訳にあたってランズベルギス氏が全文を見直し、新事実や研究の成果を反映させたことが挙げられます。さらに、過去の研究書でも触られたことのない分野を扱った二つの章の書き下ろしが加わっています。すなわち、チュルリョーニスの撮影した8点の写真を掲載した「チュルリョーニスと写真」、そして、出版当時はソビエト流の唯物論と無神論にとって好ましくないとされた事実、素材、考察を含む「チュルリョーニス精神」。もうひとつ、この日本語版には、米国在住のリトアニア人映画監督で日本でも人気のあるジョナス・メカスによる感動的な詩の序文(村田郁夫、ガビヤ・ズカウスキエネ訳)が特別に収録されています。

巻末にはチュルリョーニス作品のディスコグラフィと全音楽作品表が付いています。