日本におけるチュルリョーニス』が築いた日本とリトアニアを結ぶ架け橋
去る2026年6月14日、東京・国立西洋美術館で開催されていた展覧会「M.K.チュルリョーニス 内なる星図」が閉幕しました。本展は、国立M.K.チュルリョーニス美術館との共同企画として、リトアニア共和国文化省助成のもと、読売新聞社、リトアニア・カルチャー・インスティチュートをはじめとする多くの協力機関・財団の参画により実現しました。キュレーターはヴァイヴァ・ラウカイティエネ、山枡あおい、朝倉南の各氏です。
日本で34年ぶりとなるチュルリョーニス回顧展には、3月28日から6月14日までの会期中、約18万人が来場しました。その中には高円宮妃久子殿下も含まれています。
来場者は、M.K.チュルリョーニスの芸術世界を総合的に体験する機会を得ました。80点を超える絵画、版画、スケッチ、音楽手稿を展示した企画展(展示デザイン:サイトヲヒデユキ氏)では、交響詩《海》やピアノ作品が流れ、チュルリョーニス自身が撮影した写真のスライド上映や、芸術家の生涯とその顕彰活動を紹介するドキュメンタリー映像の上映も行われました。また、美術館学芸員や研究者による講演会やギャラリートークも開催されました。
国立西洋美術館は日本語と英語による特設ウェブサイトを開設し、継続的に情報を発信しました。展覧会図録は二度にわたり増刷されながらも完売しました。さらに全国紙、美術・文化専門誌、一般誌、SNSなどで広く紹介され、芸術総合誌『ユリイカ』は特集号を刊行しました。NHKも60年以上の歴史を持つ番組「日曜美術館」で本展を特集しました。
ガビヤ・チェプリョニーテ駐日リトアニア文化担当官は次のように述べています。
「日本の皆さまがM.K.チュルリョーニスの作品を受け入れてくださる姿を見ていると、リトアニアと日本を結ぶ深い精神的なつながりが改めて鮮明になりました。自然へのまなざし、目に見えないものへの感受性、芸術を通じ世界を理解しようとする姿勢。こうした価値観が共鳴し、多くの人々の心に届きました。
チュルリョーニスとの出会い、その卓越した人格や独自の芸術世界との接触は、多くの来場者にとってリトアニアとの最初の出会いとなり、さらに深く知ろうとするきっかけとなりました。
また、展覧会を支えたリトアニアと日本の関係者の間には、信頼と相互尊重に基づく強い協力関係が築かれました。これこそが本展最大の成果と言えるでしょう。」
本展は、M.K.チュルリョーニス生誕150周年を記念する国際文化プログラム「日本におけるチュルリョーニス」の中心事業として開催されました。
リトアニア・カルチャー・インスティチュートと駐日リトアニア共和国大使館文化部が企画した同プログラムは、2025年から2026年にかけ、東京、大阪、川崎、京都、金沢で計22件の展覧会、コンサート、講演会、シンポジウム、VR上映、教育プログラムを実施しました。
2026年には、国立西洋美術館、東京・春・音楽祭、日本作曲家協議会、桐朋学園大学音楽学部、北欧文化協会、日本リトアニア友好協会、金沢リトアニア友好協会などのご協力のもと、東京文化会館、サントリーホール ブルーローズ、東京カテドラル聖マリア大聖堂、京都・東本願寺能舞台など、日本を代表する会場で公演が行われました。
出演者には、リトアニア室内管弦楽団、ハープ奏者ヨアナ・ダウニーテ、ピアノデュオ「デュオ・ズボヴァス」、現代音楽アンサンブル「シネステシス」などが名を連ねました。
このプログラムからは、多くの新たな共同制作も生まれました。日本作曲家協議会の委嘱により11人の作曲家がチュルリョーニスの絵画に着想を得たピアノ作品を作曲し、ピアニストのロカス・ズボヴァス、末永匡、谷口知聡の各氏が、コンサート「チュルリョーニス 光と無限」において5作品の世界初演を行いました。
また、ヨアナ・ダウニーテ氏と上田智子氏は金沢で、ロレタ・ナルヴィライテ作曲《夕暮れの海への歌》の日本初演を行いました。
プログラムの締めくくりとなったのは、「シネステシス」によるドミニカス・ディギマス作品《Čiurlionis. Slowed and Reverb》の特別公演でした。東京カテドラル聖マリア大聖堂と京都・東本願寺能舞台という優れた音響空間で上演され、「東洋と西洋の出会い」をテーマとした公演では、「世界最古のオーケストラ」とも呼ばれる雅楽の団体「絲竹会」も共演し、音楽による祝福を贈りました。
さらに、マーラー・フェスティバル・オーケストラ(音楽監督・井上喜惟氏)はミューザ川崎シンフォニーホールでチュルリョーニスの交響詩《森の中で》を演奏したほか、「minä perhonen」は東京のギャラリー「elävä II」にて在本彌生氏による写真展「水は宙を視ている-チュルリョーニスの仕業-」を開催しました。
また8月には、金沢の「ギャラリーノエチカ」において、VR映画『天使の軌跡(Angelų takais)』の上映会が毎週末開催される予定です。
歴史的意義を持つ本展と関連プログラム「日本におけるチュルリョーニス」は、数年にわたる準備期間を経て実現しました。リトアニアと日本の数多くの文化機関、研究者、専門家、芸術家たちの献身により、その形が少しずつ築かれてきました。
プログラムはまもなく終了を迎えますが、ここで生まれたつながりは今後も両国を結ぶ重要な架け橋として生き続けるでしょう。
オーレリウス・ジーカス駐日リトアニア共和国大使は次のように述べています。
「このプログラムから生まれたものは、単なる展覧会やコンサートではありません。最も重要なのは、日本とリトアニアの間に新たな友情と信頼の絆が築かれ、それぞれの文化への理解と敬意が深まったことです。それこそが、このプログラムによって得られた最大の財産なのです。」